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美味い棒(第3回) [ネタもの]

*例の如くしょーもない上に長いです。12月23日の記事を読んでいることが前提です。元ネタの二作品に敬意を表します。*

<アバンタイトル>
<第2話のあらすじ>
 先生がおかしなうまい棒スティックパーティーでうまい棒を切り裂いた。
千幻万化するその味わいにその場にいた全員が酔い痴れる。
だが、先生は更なる高みに一同を導こうとしていた。

<メインタイトル>「美味い棒-UMAIBOU-」


 駄菓子屋の店内。
先生がおかしなうまい棒スティックパーティーを構える。
あまりの集中振りに一同は一声も発することができずただ見守るのみ。
先程までと異なり掛け声無しでゆっくりとしかし淀み無く内筒(プッシャー)を奥まで押し込む。
一切の無駄を排した一連の動きに一同はただただ見惚れるばかり。
 
 先生はうまい棒を何本か立て続けに処理したところで深い息を吐き、おかしなうまい棒スティックパーティーを脇に置いた。
 先生の額から玉のような汗が噴出す。と同時に先生がへたり込むかのように椅子に座り込んだ。
中年「先生!!」
先生「中年、大丈夫だ。」
 
 皿の上に押し出されたうまい棒は何故か元の形態を保っているように見える。 
 眼鏡の男がスッと一歩前に進み出た。
眼鏡「ちょっと失礼。」
 眼鏡の男がうまい棒を少しつつくとうまい棒がパカッと二つに割れた。切断面は波打っているかのような幾何学的な外観を呈していた。
小娘「綺麗.....」
若僧「口惜しいが見事だ。」
Tommy「コレハバテレンノヒジュツデスカー?」
部長「........」

 若僧達がうまい棒に手を伸ばそうとすると先生がそれを制す。
先生「まだだ。」
先生は色の違ううまい棒同士を組み合わせ始めた。
本来は別々のうまい棒だったのに元からそうであったかのように円筒形に復す。
色の違いで境目が判別できるがパッと見、切断面は判らない。
一同に装いが新たになったうまい棒が配られ各々が口に含む。

 若僧が激しい驚愕を示す。
若僧「こ、これは何だ。今までに経験したことのない味だ。」
小娘「何て複雑な味わい。しかも一口ごとに味が変わるのよ。」
Tommy「オー、シッカリアジワウドコロカ、イッキニタベテシマイマシタ。ヤッパリワカゾウノボーナスハナシデース。」
部長「.......」
眼鏡「これは2つの料理を同時に味わえる、正に画期的です。」
キザ男「何だか、うまい棒が段々と好きになってきました。」

 先生が気力を振り絞って若僧に告げる。
先生「若僧、うまい棒にはまだまだ無限の可能性があるのだ。オマエはうまい棒をただ割っただけで満足してしまっていた。そんなことでは、真に人を感動させるには程遠いわっ!!このたわけっ!!」
項垂れる若僧。

 眼鏡の男が先生に近寄り語り掛ける。
眼鏡「ちょっと、それ拝見させていただいて宜しいでしょうか?」
先生がおかしなうまい棒スティックパーティーを眼鏡の男に手渡す。
先生「御覧いただこう。」
眼鏡の男はポケットから手馴れた様子で白い手袋を取り出し両手に嵌めてから受け取った。暫く眺めた後に続けた。
眼鏡「この刃の角度に秘密があるのですね。僕の目に狂いが無ければこちらは平成の名工、15代目寶富篤作と御見受けしましたが。」
先生「やはり、判っておられたか。」
眼鏡の男がやや形式ばった感じで御辞儀をした。
眼鏡「恐縮です。」
眼鏡の男が先生におかしなうまい棒スティックパーティーを返却した。

 若僧は言葉を失い、ただただ項垂れていたが、暫くするとパッと顔を上げ突然女主人に告げた。
若僧「ばっちゃん、ナイフを貸してくれ。」
女主人「こんなのしかないよ。」
女主人が若僧に刃渡り30cmは在ろうかという、ごついサバイバルナイフを手渡す。
シルベスタ・スタローンが扮するランボーが持っているようなアレだ。
キザ男が職業柄かちょっとナイフを警戒する。一歩前に踏み出そうとしたが眼鏡の男に制された。
小娘「若僧さん。いけないわ。幾ら先生に適わないからって暴力に訴えるのは。」 
若僧「そんなわけないだろっ。」
若僧はうまい棒の上部を斜めに削ぎ、側面に幾つか穴をこじ開けた。
先生「若僧めが、苦し紛れに何か始めよったわ。」
若僧は周囲の雑音を気にせず作業を進めていく。
若僧「よし。できたぞ。」
若僧の掌の上には見事に細工されたうまい棒が載っていた。
Tommy「オー、ナンデスカ、ソレ?」
部長「.....」

 若僧がうまい棒を唇に押し当てて息を吹き込むと音が出た。
「ビョー、ビョー、ピョー。プスー。」
哀愁を帯びた音色が断続的に流れ出した。
今度は逆に先生が驚愕する。
先生「うっ。」
小娘「若僧さん。凄いわっ。」
Tommy「オー、ボーナスノコトハカンガエナオシテアゲテモヨイデース!」
部長「何故か心に沁みる音色だね。」

 若僧が一通り演奏を終えた。続けて得意げに解説する。
若僧「うまい棒は喰べるだけじゃ無くてこうやって楽しむこともできるんだっ。因みに野菜や竹輪でもこれができるんだぜ。」

 先生が苦虫を噛み潰したかのような顔で席を立ち中年に告げる。
先生「中年、帰るぞっ!!おかしなうまい棒スティックパーティーは若僧、オマエにくれてやるっ!!せいぜい修練に励むが良いわっ!!」
中年「は、はい。」
中年がおかしなうまい棒スティックパーティーを若僧達のテーブルの上に置いた。
先生が店を出る。中年が去り際に済まなそうな顔をして若僧達の顔を見た。
中年「若僧様、申し訳ございません。」
先生「中年、何をしておるっ!!
中年が慌てて先生の後を追う。
程無くしてリムジンが店を離れた。

眼鏡「僕としたことが、少々長居をし過ぎました。そろそろお暇(いとま)しましょうか。」
 その時、突然携帯電話の着信音が響き渡った。眼鏡の男がポケットから携帯電話を取り出し耳にあてる。
眼鏡「はい、眼鏡です。................................、はい、そうでしたか。どうもありがとう。」
キザ男「眼鏡さん?」
眼鏡「落語好きさんからです。うまい棒の新製品は黒糖味だそうですよ。お土産にいただいていきましょう。」
 うまい棒黒糖味の袋を手にした眼鏡の男とキザ男が店を出て行こうとする。玄関を越えようとする寸前、不意に眼鏡の男がくるりと振り返った。右手の人差し指を立てている。
眼鏡「最後にもう一つ。そのおかしなうまい棒スティックパーティーですが、チョコレートには対応していないようですよ。御用心。じゃあ。」
 店の外から段々と遠ざかる眼鏡の男とキザ男の会話が聞こえる。
眼鏡「キザ男君。そもそもうまい棒というのは1979年、福岡.......」
キザ男「車の中でじっくり承ります。」
 スポーツカーが急発進して走り去る音が聞こえてきた。

 2グループが去った店内は静けさを取り戻した。
 テーブルの上にはおかしなうまい棒スティックパーティーが残されている。若僧がそれを手にして投げ捨てよう
 とした。
若僧「くそっ、こんなものっ!!」
 小娘がその手に縋り付きつつ諭す。
小娘「若僧さん、いけないわ。先生は貴方に期待しているからこそ、これを授けてくださったのよ。貴方はそれに応えなければならない筈よ。」
若僧「やつにそんな了見があるもんかっ!!」
小娘「先生はうまい棒に更なる可能性があることを私達に教えて下さったわ。次は貴方の番よ。」
若僧「くっ。」
 若僧は荒々しくおかしなうまい棒スティックパーティーをポケットに捻じ込む。
若僧「ばっちゃん。この店にあるうまい棒をありったけくれっ!!」
女店主「あれまー、1901本で19,960円(消費税込み)だよ。10円負けてあげるよ。」
 若僧が財布を勢い良く取り出して中身を見る。中には小銭が数枚と勝馬投票券(いわゆる馬券)が数枚。
若僧「.................、小娘さん、ゴメン....、ちょっと貸して下さい.......。」
 小娘はガクッとするがお札でパンパンに膨らんだ財布の中から諭吉さんを数枚無造作に引き抜いて若僧に渡した。
女主人「はい、御釣、50萬両だよっ」
若僧は残りの札を自分の財布に何の躊躇いも無く入れる。
程なくして若僧一行も店を出た。

 店の前でうまい棒を詰め込んだ袋を手にした若僧が吼える。
若僧「見てろよ。次こそは貴様をギャフンと言わせてやるっ!!」
 若僧の目に闘志の炎が燃え盛る。
小娘「そうよ、若僧さん。その意気よっ!!」

<エンディング>
 首都高を走るリムジン。後部座席には先程の先生。窓の外を眺めながら先生が呟く。
先生「若僧めが......、フン、小癪な真似を.........。」
 口調とは裏腹に先生の目には仄かな優しさが浮かんでいた。

--------------------完-------------------------


Cast
1)若僧:20歳代後半の青年。一応ネクタイ、スーツ姿だがちょっとだらしない感じの服装。「先生」と何やら確執があるのかも。やや単細胞な性格。先生の偉大さについては理屈の上では理解しているが、とある事情のために素直になれない。更に金遣いに問題があることが判明した。
2)連れの女:20歳代前半の可愛らしい女性。若僧に好意を持っている気配あり。先生を尊敬している。事情を理解した上で若僧には先生に正々堂々と立ち向かい乗り越えて欲しいと願っている。何故か金回りが良さそう。
3)Tommy:天然パーマの眼鏡をかけた小柄な40歳代男性。恐妻家のちょっとお調子者の中間管理職ではないだろうか。きっと子供は生意気なのだろう。
4)部長:口髭をたくわえた50歳代の温厚そうな男性。一行の上司にあたる。第1話で意外な技を披露するなど、ただのお飾りではないようだ。
5)壮年の男(先生):総髪で着物を着た恰幅の良い男性。60歳代だが気力が充実しているためか幾分実年齢より若く見える。陶芸、書、絵画等の全てに於いて一流と称されている芸術家のような気がする。喰もまた芸術なりとの信念を持っており稀代の美喰家としての側面もあるような。若僧に厳しい態度を取っているが、何やら事情があるようだ。言動からは若僧に期待を寄せている節が垣間見える。
6)御付の中年:角刈りの50歳代男性、先生の秘書的な役割をこなしている。若僧を様付けで呼ぶなど事情を知っている様子。指には包丁蛸が見える。
7)眼鏡の男:飄々とした立ち振る舞いながら何か一筋縄ではいかない予感を感じさせる謎の男。桜の代紋の入った手帳を某所で見せていたとの噂がある。様々なことに造詣が深く、まだまだ何かを隠していそう。
8)キザ男:眼鏡の男の同僚。ええ家(し)の坊(ぼん)のようだ。締眼鏡の男よりは常識を持ち合わせているが、庶民の事情には疎い。運転が荒い。
9)老齢の女主人:80歳に手が届こうかという年齢の割りに衰えを感じさせない外見を持つ。若僧にばっちゃんと呼ばれるなど親しい関係が伺える。先生と眼鏡の男とも関係が深い。奥から出してきたナイフは手入れは行き届いている物の相当に使い込まれており、つい最近も血を吸った形跡があるようなないような。夜中に隣町の公園で何か大きな袋を埋めていたとかいないとか。そういえば最近店のジーチャン見ないよね。
10)落語好き(特別出演):眼鏡の男の同僚。小太りでこちらも眼鏡を掛けている。逃げた女房に未練たらたららしい。

年末にこんなものを投稿していて、我ながら大いに疑問を感じるが...........................。
とりあえず皆様良いお年を。
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ともちん


by ともちん (2012-01-01 14:18) 

ともちん

美味い棒の序章と3部作、楽しませて頂きました。
by ともちん (2012-01-01 14:21) 

punchiti

ともちんさん。
明けましておめでとうございます。
年末年始にしよーもない内容でお目汚ししてしまい
申し訳ございません。
Part2をそのうちアップしたらよろしくお願いします。

by punchiti (2012-01-01 18:17) 

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